前編では、大手メーカーの営業だった私が感じていた「ぬるま湯の恐怖」と、会社の看板を失うことへの葛藤についてお話ししました。
仕事の刺激や市場価値を求めたい気持ちはある。でも、僕たちには「守るべき家族と生活」がある――。
後編となる今回は、最も生々しい「お金(年収ダウン)の不安」や「家族の説得」、そしてベンチャーに飛び込んで激変した「リアルな生活と誤算」について、私の実際の損得勘定をすべて丸裸にしてお伝えします。
リアルな現実:年収は150万円ダウン。我が家が踏み切った「固定費削減」と「資産のシミュレーション」
ベンチャー転職にあたり、一番の恐怖はやはり「お金」でした。 結果から言うと、大手を辞めてベンチャーに移ったことで、私の年収は約150万円下がりました。
30代半ば、子持ちの世帯にとって、この金額のダウンは決して小さくありません。そこで私は、勢いで転職するのではなく、何度も泥臭い計算を繰り返しました。
徹底的な固定費の見直し
まず取り組んだのは、収入に見合った支出にするための「固定費の仕分け」です。
- 生命保険・医療保険の見直し(不要な特約の解約など)
- 使っていないサブスクの解約
- スマホやインターネット回線の乗り換え(格安SIMへの移行)
- 日々の食費や衣服費の見直し(少し安いものを選択)
「これだけ削れば、年収が下がっても毎月これだけ残る」という収支を何度も計算しました。さらに、これまで貯めてきた貯蓄をそのまま眠らせるのではなく、「これをどう運用していけば将来の教育費や老後資金をカバーできるか」という資産形成のシミュレーションを家族で共有しました。
目先の給与明細の数字は減っても、「出ていくお金」と「運用するお金」をコントロールすれば生活は破綻しない。 この確信が持てたことが、一歩を踏み出す最大の盾となりました。
妻との対話:共働きの安心感と「単身赴任はイヤだ」という共通の価値観
世帯持ちの転職で最大の関門と言われる「家族の説得」ですが、我が家の場合は大きな反対はありませんでした。その理由は2つあります。
①「家族一緒の時間」に対する価値観の一致
前編でお話しした通り、優秀な上司が昇進でもないのに単身赴任になっていく姿を見て、私は危機感を抱いていました。妻に相談したところ、「家族を犠牲にしてまで大手の看板に固執する必要はない」「単身赴任は避けるべき」という意見が完全に一致したのです。
また、妻も働いている「共働き世帯」であったため、万が一私の収入が一時的に下がっても、すぐに生活が立ち行かなくなるわけではない、という客観的な安心材料もありました。
② 働き方の劇的な変化(在宅中心へ)
もう一つ、妻にとってポジティブだったのは「働き方」の変化です。 前職の大手メーカー時代はフル出社で、社内調整の飲み会ばかり。しかし、転職先のベンチャーは在宅勤務が中心(たまに外勤)というスタイルでした。
「年収は下がるけれど、その分、家にいる時間が増えて一緒に子育てができる」 この変化は、ワンオペ育児で疲弊していた妻にとっても、前向きに応援してくれる大きな理由になりました。
飛び込んで分かった「手に入った究極の安定」と、想定外の「誤算」
実際に有形(大手メーカー)から無形(ベンチャー)の営業へ飛び込んでみて、私の生活と価値観は180度変わりました。
圧倒的に増えた「家族の時間」
これまでは付き合いの飲み会に追われていましたが、今は自分が「本当に行きたいもの」だけに厳選しています。なぜなら、ベンチャーの仲間たちは「会社にしがみつく」という発想がなく、自分の意志で自立して行動している人が多いからです。無駄な同調圧力はありません。
その結果、毎日みんなで晩ご飯を食べ、子供と一緒にお風呂に入れる生活が手に入りました。この時間は、大手時代の年収150万円分よりも、私にとって遥かに価値のある財産です。
また、何より「有形と無形、両方の営業を泥臭く経験した」という事実は、自分の営業スキルへの大きな自信となり、こうしてブログで発信できるだけの「個人の市場価値」に繋がっています。
ただし、甘くはなかった「誤算」
もちろん、良いことばかりではありません。ベンチャーに移って初めて気づいた誤算もありました。
それは、「大手のような定期昇給が基本的にはない」ということです。
大手企業にいれば、良くも悪くも年齢とともに給与のベースが上がっていきます。しかし、ベンチャーにそれはありません。給与を上げたければ、成果を出して自分で勝ち取るしかない。
「仕事に対して一切の手抜きが許されない環境」は、30代後半の身体には正直タフであり、大変なところでもあります。しかし、だからこそ営業としてのプロ意識が磨かれ、引き締まった日々を送れているのも事実です。
結論:ぬるま湯も荒波もどちらも正解。大切なのは「自分の意志で選ぶ」こと
大手のぬるま湯にとどまり、家族のために安定した給与を運び続けるのも、一つの立派な正解です。 ベンチャーの荒波に飛び込み、年収ダウンと引き換えに自由とスキルを掴み取るのも、また正解です。
既婚・子持ちの30代半ばの転職に必要なのは、ノリや勢いではなく、「リアルなお金の計算」と「家族との価値観のすり合わせ」です。
年収150万円ダウンの恐怖は、固定費の削減と資産運用への理解で乗り越えられました。 定期昇給がない厳しさは、手を抜けないスリルと圧倒的な家族の時間で相殺されています。
もし、いま大手の名刺を捨てることに怯え、毎晩モヤモヤしているなら、まずは「我が家の毎月の固定費」を1行ずつ書き出してみることから始めてみませんか? 会社の看板を外したあなたの「本当の挑戦」は、そこから始まります。
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