これまでの記事では、私がSaaSベンチャーに転職してからの営業ノウハウや、社内ツール、マインドのキャッチアップについてお伝えしてきました。
実務の壁と並んで、30代後半・既婚・子持ちのメーカー営業マンが転職時に最も不安に思うのは、「ベンチャーに転職して、家族との生活や働き方はどう激変するのか?」という点ではないでしょうか。
「毎日終電まで残業なのでは」「激務で家庭が崩壊するのでは」と心配されている方も多いと思います。
結論から言うと、私は食品メーカー時代と比べて、家族と過ごす時間は圧倒的に増え、生活の質は劇的に向上しました。しかし同時に、「働くことへの意識」を180度変えざるを得ないシビアな現実も知りました。
私が実際に体験した、メーカーとSaaSベンチャーの「働き方のギャップ」を、良い面も悪い面も包み隠さず共有します。
転職して消え去った、メーカー営業特有の「3つの縛り」
フル出社からフルリモート・フルフレックスの環境へ移ったことで、私の日常から以下の3つのストレスが完全に消え去りました。
通勤ストレスと、無駄な接待の消滅
毎日の満員電車や、直行直帰で車を何時間も運転する肉体的な疲労がゼロになりました。また、新規開拓メインの営業スタイルになったこともあり、前職のような「関係性を維持するための遅くまでの付き合い(接待)」も一切なくなりました。
土日問わず鳴る「欠品の恐怖の電話」からの解放
食品メーカー時代は、土日であっても「欠品が出た」「トラブルが起きた」という連絡があれば、即座に対応に追われるのが日常茶飯事でした。SaaSの世界では物理的な「モノ」を扱わないため、週末に突発的なトラブル対応の電話に怯えることがなくなり、精神的な解放感は非常に大きいです。
「有給が取れない」という空気の払拭
ベンチャーでは、事前に自分のスケジュールを管理し、計画さえ立ててしまえば、前もって予定が入らないようにブロックすることができます。そのため、有給をしっかり取得して安心して家族旅行に出かけることも可能になりました。
妻も喜んでくれた、フレックスがもたらした家庭の変化
「意外」と思われるかもしれませんが、残業時間自体はメーカー時代と大きくは変わっていません。大きく変わったのは、「働く時間を自分でコントロールできるようになったこと」です。
フレックス制度のおかげで、夕方に一度仕事を抜け、家族と一緒に夜ご飯を食べ、家事をこなし、子どもを実家や幼稚園に送り迎えする時間を柔軟に作れるようになりました。そして、家族が寝静まった後に残った仕事を再開する、といった動き方ができています。
この働き方は今の自分に非常に合っていますし、何よりワンオペ育児から解放された妻が、一番喜んでくれているように感じます。
一方で付きまとう、ベンチャー特有の「成果主義のしんどさ」
ここまで読むと「ベンチャー転職は良いこと尽くしだ」と思われるかもしれませんが、当然、そんな甘い世界ではありません。自由と快適さを手に入れた代わりに、私が背負うことになった最大のしんどさは「徹底的な成果主義」です。
大手メーカー時代は、良くも悪くも「定期昇給」があり、大きな成果を出していなくても、毎月決まった給与が保証されていました。
しかし今の環境では、重視されるのはどこまでも「成果(ファクト)」です。 成果を出せば出すほど、20代の若手であっても驚くスピードで給与は上がります。しかしその裏返しとして、「成果が出なければ、普通に降給(給与が下がる)もある」という冷徹なルールが存在します。
「会社にいれば勝手に給与が上がる」という甘えは一切通用しません。 自分で時間をコントロールして家族との時間を守るからこそ、限られた時間の中で必ず数字を出すという、プロアスリートのような「ヒリヒリした意識」を常に持ち続ける必要があります。
定期昇給があるかないか。これは、働くということに対する僕の意識を最も大きく変えた部分でした。
まとめ:自由の対価は「プロとしての成果」
有形メーカーから無形SaaSベンチャーへの転職は、私にとって「家族との穏やかな日常」を取り戻す最高の選択でした。
ただ、それは決して「楽な環境に逃げた」わけではありません。 通勤や突発的な電話から解放された時間を、自分の体調管理や、商談前の圧倒的な仮説準備に投資し、成果を出し続ける責任を負っています。
- 家族の時間を最優先にしながら、自分の裁量で働きたい
- ただし、その自由の対価として、自分の数字に100%責任を持つ覚悟がある
もしあなたがこの覚悟を持てるなら、30代後半からのベンチャー転職は、家族にとっても、あなたのキャリアにとっても、間違いなく人生を好転させる選択になると確信しています。

