【有形営業と無形営業】「モノ売りとコト売りの違い」じゃ分からない。大手食品メーカー営業がベンチャーで知った「仮説とゴール設定」のリアル

キャリア

転職サイトやビジネス書を開くと、有形営業と無形営業の違いについて、よくこんな風に書かれていませんか?

「有形営業は『モノ』を売り、無形営業は『コト(体験や価値)』を売る仕事である」

……正直に言わせてください。この説明、現役の営業マンからすると「で、結局何が違うの?」と全くピンと来なくないですか?

「モノ」だの「コト」だのという抽象的な言葉だけでは、実際の営業現場で使う筋肉がどう違うのか、自分が転職して通用するのか、リアルなイメージなんて絶対に湧きませんよね。

私は30代後半で大手食品メーカー(有形・ルート)から、ベンチャー企業(無形・新規)へと転職しました。実際に両方の現場を泥臭く経験して分かったのは、営業スタイルの違いはそんな綺麗事ではなく、「仮説構築の難易度」と「お客様とゴールを共有する難しさ」にありました。

この記事では、同じ「営業」という職種でありながら、真逆の世界へ飛び込んだ私が1年間で味わった衝撃と、有形・無形の両方を経験することで手に入る「一生モノの営業スキル」について解説します。

2つの営業スタイルの決定的な違い(対比表)

まずは、私がこの1年で実感した「食品メーカー営業」と「ベンチャー無形営業」のリアルな違いを整理しました。

比較軸前職:大手食品メーカー(有形)現職:ベンチャー企業(無形)
営業のスタイルルート営業(すでにある関係性)新規営業(ゼロからの関係構築)
提案の根拠データ分析(市場データ・販売数値)ディスカッション(相手の状況把握)
仮説の性質パターンが絞られる顧客の数だけ無限にある
商談のスタート同じゴールを向いた状態での議論ゴールの目線合わせからスタート

同じ「営業」という名前がついていても、中身は完全に「真逆の、新しい仕事」でした。

有形(食品メーカー)時代:「数字の根拠」と「すでに目線が合ったゴール」

前職の食品メーカー時代、私の得意技であり最大の武器は「データ分析」でした。

すでにルート(関係性)がある顧客に対して、市場環境のデータや、過去の販売データという「目に見える数字」をベースに提案を組み立てていたのです。

もちろん、有形営業でも「おそらく顧客はこう考えているだろう」という仮説をもとにデータ分析を行い、提案・検証を繰り返します。しかし、有形商材(特に食品などのルート営業)の特徴は、「仮説のパターンが、ある程度ルール化されて絞られている」という点にあります。

商品力と会社の看板が強固な後ろ盾としてあるため、相手の主観よりも「客観的な数字」が最大の根拠になり、ある程度の予測を立ててパターンに当てはめることが可能だったのです。

はじめから「同じ方向」を向いている強み

そして何より有形営業がスムーズなのは、お客様(スーパーのバイヤーなど)と最初から「売上を上げる」「利益を確保する」という共通のゴールを持てている点です。

目指すべき山頂(ゴール)がすでに一致しているため、商談は「どうやってその山を登るか(どの商品を、どう配置するか)」という具体的な「議論」からスタートできます。これこそが大手の仕組みであり、有形商材ならではの特徴でもあるのかもしれません。

無形(ベンチャー)での絶望①:「仮説がお客様の数だけ無限にある」というカオス

しかし、ベンチャーの無形商材営業に移った瞬間、そのやり方は一切通用しなくなりました。

ブランドもなければ決まった形もない。何ができるかも、お客様の課題によって千善万別。

ここで求められる「仮説構築力」の難易度は、有形商材の比ではありませんでした。なぜなら、無形商材の営業には、使い回せる「仮説のパターン」が存在しないからです。

  • ターゲットの「業種」が違えば課題は変わる。
  • 「職種」が違えば見ている景色が変わる。
  • 仮に同じ業界・同じ職種だとしても、その会社の文化やルールが違えば、中で起こっている社内政治やペイン(困り事)は全く別物になる。

つまり、仮説がお客さんの数だけ無限に存在する世界なのです。あらかじめ予測した数字を武器にして、こちらから主導権を握るような提案は通用しません。

4. 無形(ベンチャー)での絶望②:「どこに困っているか」の目線合わせから始まる難しさ

そして、私が転職して一番難しいと感じ、苦労した原因がここにあります。

無形商材の営業は、お客様と「そもそも、どこに困っているのか?」という目線合わせからスタートしなければならないのです。

有形時代のように「売上アップ」という分かりやすい共通のゴールが最初から用意されているわけではありません。お客様自身も、自社の本当の課題がどこにあるのか気づいていないことすらあります。

そのため、商談の最初は提案ではなく、徹底的な「ディスカッションを通じたヒアリング」が必要になります。

相手の状況を丁寧に紐解き、

「御社の本当の課題はここですよね?」

「ここを解決すると、こういう良い未来(正解)がありますよね」

と、相手と対話しながら、その商談の『ゴール設定』そのものをゼロから一緒に作り上げていくのです。

この「目線合わせ」がズレると、どんなに素晴らしい提案をしても1ミリも刺さりません。使う脳の筋肉が前職とは完全に別物で、最初は毎日知恵熱が出るほどでした。

まとめ:真逆の世界を生き抜いた先に手に入る「最強のハイブリッド営業」

有形ルート営業と、無形新規営業。

これらは完全に真逆の位置にあります。だからこそ、30代後半でこの両方を経験することは、キャリアにおいて凄まじい価値を持ちます。

無形営業の世界で「顧客の数だけある無限のパターンから本質的なペインをあぶり出し、ゼロからゴールを設定するヒアリング力・ディスカッション力」が鍛えられてくると、前職で培った「数字をベースにロジックを組み立て、検証するデータ分析力」と綺麗に掛け算ができるようになります。

ただの「感覚派の無形営業」でもなければ、ただの「仕組みに頼った有形営業」でもない。

『深いディスカッションでお客様とゴールの目線を合わせ、本質的な課題を掴み、それを確かなデータで証明して解決できる営業』

これこそが、大手のぬるま湯を飛び出し、ベンチャーの荒波で1年間もがき続けた人が手に入れられる、会社の看板に依存しない「一生モノの稼ぐ力」なのだと思っています。

同じ営業職でありながら、「自分のスキルは外で通用するのか」と夜な夜な悩んでいる皆さん。まだまだ苦労は多いですが、営業の面白さは一気に広がるので、感じたことなどを引き続き発信していきますね。

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