「今の営業スタイルに、ちょっと疲れてきたな」
「もっとお客様の課題に向き合える仕事がしたいな」
食品メーカーで営業をしていると、ふとそんな風に感じる瞬間、ありませんか。
日々の細かい価格交渉、数字のプレッシャー。
慣れてしまっているからこそ「営業ってこういうものだよね」と思い込んでしまいがちですが、実は業界を変えると、営業のあり方そのものがガラッと変わることがあります。
私自身、食品メーカーからSaaSに転職して、そのギャップに驚いた一人です。
今回は、同じ「営業」という仕事なのにここまで違うのか、という実体験を、価格交渉というテーマに絞ってお話ししてみたいと思います。
食品メーカー営業の現実:0.1円の攻防
食品メーカーの世界では、「1円でも安く」が当たり前のように求められます。
しかも交渉の単位は1円どころか、0.1円単位。「そんな細かい話ある?」と思われるかもしれませんが、これが日常茶飯事なんです。
私は大手流通を担当していたことがあるのですが、この規模になると0.1円の交渉が、あっという間に費用として10万、20万円と膨れ上がっていきます。
しかも物量も一緒に増えていくので、話はそこで終わりません。
物量が増えれば、当然上司の数字にも影響してきますし、「費用予算は問題ないか」という確認が必要になります。
逆に物量が伸びた結果、供給が追いつかず欠品でも起こしてしまえば、それはそれでまた次の交渉のタネになってしまう。
だから「供給量は本当に大丈夫か」を、営業・生産・物流など関連部署と一つひとつ調整しながら仕事を進めていく。
正直、かなり労力のかかる仕事でした。
さらに厄介なのが、一度実績を作ってしまうと、翌年はそれ以上の数字を求められるという構造です。
今年応えた要求は、来年の当たり前になる。
だから「たかが0.1円」の交渉であっても、目の前の数字だけでなく、来年、再来年を見据えた長期的な視点を持ちながら検討する必要がありました。
もちろん、本当に強い商品であれば断ることもできますが、去年と同じ商品ラインナップで、今年はそれ以上の売上目標を達成しなければならない。
そんな状況では、営業側も「価格交渉をしてでも数字を作りにいく」という判断をせざるを得ない場面が、どうしても出てきます。
お客様にとって最適な売場提案をしたつもりでも、最終的には「値決め」という壁が立ちはだかる。
そうした交渉を毎回毎回繰り返しながら、なんとか商品を世の中に届けていく。
それが、私が知っている食品メーカー営業のリアルでした。
SaaS営業の現実:価格交渉はほとんどない
一方、SaaSの営業に来てみると、こうした価格交渉はほとんど起こりません。
もちろん、まったくのゼロというわけではないんです。比較検討されている段階では、見積もりも大事な判断材料になりますから。
ただ決定的に違うのは、多くの場合「じゃあ個人の裁量で安くします」というふうには決まらず、会社としての意思決定になる、という点です(このあたりは会社によって差があるかもしれません)。
そもそも、値下げしたからといって導入が決まるとも限らないんですよね。企業がSaaSを購入するときは、
「何のためにそれを買うのか」という目的が社内でもきちんと問われます。
だから、目的や課題がはっきりしないまま「とりあえず安くしてくれたら検討します」というような、先出しの値段交渉は、ほぼ起こりません。
そして、最後の最後に価格の話が出てきたとしても、その頃にはもう「課題解決の手段としてこの製品を選ぶ」というフェーズに入っています。だからこそ、無理な要求をされることもほとんどないんです。
正直に言うと、こうした交渉事に関しては、食品メーカー時代の営業と比べたら信じられないくらいストレスフリーです。
数字を作るといっても、食品メーカー時代は少しネガティブな気持ちで交渉に臨むこともありました。
でもSaaS営業では、仮に交渉ごとがあったとしても、それはお客様の課題解決につながっているという前提があるので、同じ「交渉」でも捉え方がまったく違います。
お客様の「困りごと」と向き合う面白さ
SaaSはツールを紹介して終わり、ではありません。
お客様がそのツールをどう活用すればいいのかを、一緒に考えていく必要があります。同じ機能でも、お客様によって「何の課題を解決する手段になるか」は変わってくるからです。
だから、相手が何に困っていて、どういうことを解決したいのか、それを解決できたらどんなメリットがあるのか——ここを一緒に考えて、初めて「投資する意味があるかどうか」をお客様自身に判断してもらえます。価格の攻防ではなく、お客様が抱えている課題そのものと向き合う。この時間が、今の仕事の醍醐味だなと感じています。
転職は不安だらけ、でも食品メーカーの経験は武器になる
とはいえ、転職するときは正直、不安でいっぱいでした。
ITのこともよくわからない状態でのチャレンジだったので、最初の半年は特にものすごく働いてインプットしましたし、残業もかなり多かったです。
それでも今振り返ると、食品メーカーの営業で培った経験は、SaaS営業でもしっかり武器になっています。
ルート営業で鍛えられた「相手の感情を読む力」、数字を扱ってきたことによる「ロジカルシンキング」。
こうした力は業界が変わっても営業という仕事の土台になるものなので、最初の慣れさえ乗り越えてしまえば、問題なくやっていけると感じています。
同じ「営業」という仕事でも、価格交渉のあり方も、面白さの質もまったく違いました。それでも、お客様の困りごとと真正面から向き合えるという点で、今のSaaS営業には大きなやりがいと面白さなので、少しでも実際はどうなの?が知りたい人は色々と調べてみてください!

