前回の記事では、私が30代後半で「大手企業の果てしない順番待ち」を降り、勝負の舞台を社外の市場に移した理由をお話ししました。
私は最終的に、大手メーカーからIT・SaaSベンチャーの営業(フィールドセールス)へと転職したのですが、待っていたのは「働く常識が180度ひっくり返る日々」でした。
今回は、大手を飛び出した私が手に入れた「光」の部分と、ベンチャーならではの「ヒリヒリする影」の部分、そして異業界への転職を成功させるために絶対に不可欠だったマインドセットについて、生々しいリアルをお届けします。
転勤なし、フルリモートがもたらした「家族の時間」という最高の光
ベンチャーへ転職し、フルリモート中心の働き方に変わったことで、私の人生の幸福度は劇的に上がりました。
大手にいた頃に付きまとっていた「転勤」のリスクが消えたことで、「人事権を持つ社内の誰かに気に入られなければならない」という、本質的ではない余計なことを一切考えなくて済むようになったのです。これだけでも、精神的なストレスは驚くほど激減しました。
そして何より、家族との時間がガラリと変わりました。
これまでは夜遅く、一緒に食べられなかった夕食を、毎日家族みんなで囲めるようになりました。子どもたちと一緒に当たり前のようにお風呂に入れる幸せは、何物にも代えられません。
我が家は共働きなので、日中に私が家事や育児のサポートに回れるようになったことで、妻の負担も減り、夫婦関係や家族の仲はこれまで以上に深まりました。これこそが、私が大手を降りてでも手に入れたかった未来でした。
誰も守ってくれない。「定期昇給」のない成果主義というヒリヒリ感
しかし、ベンチャーの世界は甘いことばかりではありません。
実際に飛び込んでみて、改めて「大手企業の待遇がいかに恵まれていたか」を痛感したのも事実です。
大手企業には、良くも悪くも「定期昇給」が当たり前にありました。極端な話、そこまで死に物狂いで頑張らなくても、会社に籍を置いているだけで一定の給与は担保されていたのです。
一方で、ベンチャーは完全な成果主義です。
どれだけプロセスが良くても、どれだけ夜遅くまで頑張って行動していても、最終的な「結果」が出なければ給料は1円も上がりません。 それどころか、結果が出続けなければ「降給(給料が下がる)」というリアルなリスクすら隣り合わせにあります。
この環境に身を置くと、仕事に対して「より真摯に、より貪欲に向き合う」ことが強制されます。大手の看板というぬるま湯から出て、自分の腕一本で数字を獲りにいくヒリヒリ感は、最初は想像以上のプレッシャーでした。
異業界転職の壁。過去の自分を捨て、若い世代から学べるか
さらに私を悩ませたのは、「業界の違い」による言葉と慣習の壁でした。
メーカーからIT・SaaSという全く異なる世界に飛び込んだため、最初は飛び交う専門用語や業界のスピード感に追いつくので精一杯でした。
この壁を乗り越えるために私が徹底したのは、泥臭いキャッチアップです。ビジネス書を貪欲に読み漁り、YouTubeの解説動画を狂ったように見返して知識を詰め込みました。
そして何より重要だったのは、「これまでの大手での成功体験(過去の自分)を綺麗に否定できるか」、そして「自分より一回りも若い世代の同僚から、プライドを捨てて素直に学べるか」という観点でした。ここを拗らせて「前職の大手ではこうだった」とプライドに固執した人は、ベンチャーでは一瞬で脱落していきます。
苦労は多いですが、ベンチャーは意欲さえあれば年齢に関係なく、どんどん裁量を持たせて新しい仕事にチャレンジさせてくれます。また、最新のAI活用なども社内で当たり前のように進んでいるため、大手にいた頃とは比較にならないスピードで、自分のスキルが磨かれている確信(仕事貯金)があります。
まとめ:これこそが、自分の価値を確かなものにするということ
異業界のベンチャーで揉まれ、圧倒的なポータブルスキル(どこでも通用する力)を身につけた今、私の中にはある「強い自信」が芽生えています。
それは、「もし極端な話、元のメーカー業界に戻ることがあったとしても、今の自分なら当時以上の圧倒的な価値(無形営業のノウハウやデジタルスキル)を見出せるし、どの環境でもステップアップできる」という確信です。
大手の看板に守られた「見せかけの安定」の中にいるうちは、自分の本当の市場価値は分かりません。あえてヒリヒリする環境に身を置き、個人の牙を研ぐこと。これこそが、自分の価値を高めて、将来の給与を本当の意味で確かなものにし、世の中に貢献できるビジネスパーソンになる唯一の道なのではないでしょうか。
もしあなたが今、大手の環境にモヤモヤしているなら、まずは社外の世界に触れてみることを強くおすすめします。
まずは、会社の看板を外した「あなた」にどんなオファーが届くのか、市場価値を測ることから始めてみてください。その一歩が、数年後に家族との時間と、どこでも食っていける本物のスキルを手に入れる分岐点になります。

