「お客様のためを思って考えれば、行動も自然と変わるはずだよ」
上司からこう伝えられて、頭ではわかっていても、なかなか行動に移せなかった経験はないでしょうか。逆に、後輩にそう伝えたのに、はたから見ていて、うまく響いていないと感じたことがある方も多いと思います。
上司の言っていることは、決して間違っていません。むしろ営業として理想的な考え方そのものです。それなのに、なぜかうまく届かない。この記事では、そのすれ違いがなぜ起きるのか、そして「次席」という立場だからこそできる橋渡しについて整理してみたいと思います。
上司の正論が、部下に届きにくい理由
上司は、チーム全体や事業の成果を見ながらメンバーに接しています。だからこそ、「お客様のために」という本質的で正しい言葉が、自然と出てきます。
一方で後輩は、目の前の数字や評価に余裕がなく、正論をそのまま受け止められる状態にないことが少なくありません。評価は給与にも直結する切実な問題ですから、それを気にしてしまうのは、決して悪いことではないはずです。
上司と部下は、立場も見ている景色も異なります。そのため、直接のコミュニケーションだけでは、お互いの事情がうまく伝わりきらないということが、どうしても起きてしまいます。
次席だからこそできる、双方の事情の翻訳
ここで大きな役割を果たせるのが、上司と部下の間に立つ「次席」というポジションだと考えています。
次席は、上司の意図や評価基準を、比較的近い距離で理解できる立場にいます。同時に、部下(後輩)の悩みや余裕のなさにも、現場に近い目線で寄り添うことができます。
つまり、上司の言葉を後輩にそのまま伝えるのではなく、後輩の状況を踏まえて言葉を翻訳し、届く形にして伝えることができるのです。逆に、後輩が抱えている本音を、上司に代わって汲み取ることもできます。
この「間接的に双方の事情を理解しながら伝える」という役割こそが、次席というポジションならではのフォロワーシップだと思います。
現場目線に降りて、プロセスで伝える
次席が後輩に伝えるときに意識したいのは、いきなり上司同様に「お客様のために考えよう」という最終形を求めないことです。理想を一足飛びに求めるのではなく、そこに至るまでのプロセスを一緒に描いていくことが大切です。
ステップ1:数字や評価が気になることを否定しない
後輩の大半は数字のことが気になるであったり、上司の評価が気になるというのが本音として多くあります。
仮にそういう言葉が出てきたとしても、否定することなく、まずは、「数字や評価が気になるのは、悪いことではないですよ」と伝えることから始めます。
ここを否定してしまうと、本音を話せなくなってしまいます。
ステップ2:上司が評価するポイントを一緒に言語化する
次に、「上司は何を評価しているのか」を、一緒に考えていきます。
- 上司はどういう情報を求めているか
- どういう仕事の進め方をすると安心してもらえるか
- チームにどういう貢献を期待されているか
次席は、上司の考えを比較的つかみやすい立場にいるからこそ、これらを言語化する手助けができます。
ステップ3:組織の動き方への理解を促す
上司が求めることが見えてくると、次第に「組織はこうやって回っているのか」という感覚が、後輩の中にもつかめるようになっていきます。社内をどう動かせばよいかという知見も、この段階で少しずつ溜まっていきます。
ステップ4:社内の信頼を土台に、顧客志向へ引き上げる
社内の信頼という土台ができて初めて、顧客と一緒に伴走支援をするという顧客志向の動きが実現できるようになります。社内の信頼を得られない人が、社外から評価されることは稀だからです。
このタイミングを見極めて後押しできるのも、上司と部下の両方を近くで見ている次席だからこそだと思います。
フォロワーシップが、チームの橋をつくる
フォロワーシップというと、上司を補佐することだけをイメージされる方も多いかもしれません。しかし、それだけではなく、後輩の状況を理解し、上司との間をつなぐこともまた、フォロワーシップの重要な役割だと考えています。
上司の正論を、そのまま後輩に届けるのではなく、後輩が今いる場所に合わせて言葉を選び、プロセスを一緒に描いていく。
次席がその橋渡しを担うことで、上司の伝えたいことも、後輩の抱えている事情も、どちらも置き去りにされないチームに近づいていくのではないでしょうか。

